「なあ、ジェム?」
ダッドは僕のことを、ジムやジミー
ではなく〝ジェム〟と呼んでいた。
「見てごらん、星が出てきたね? 僕の故郷では、この何倍もたくさんの星が輝いているんだよ。まるで宝石のようにね」
空を見上げるダッド。
「ジェム、僕の宝石――いつか君に、あの星空を見せてあげたい……」
ダッドの故郷は
ロンドンから離れていたので
まだ一度も、行ったことは無かった。
「グランマ[祖母]は、優しくて好きだよ。グランダディ[祖父]には、会ったことないから分からないけど」
この頃は
ダッドの母親だと思っていた
祖母のキャサリンが
実はダッドの義母だとは
知らなかったんだ。
僕等が住んでいるロンドンの家は
キャサリンから与えられたものらしく
その経緯には、ダッドの複雑な
家庭環境が影響しているみたいだ。
そう言えば、ダッドのファーストネームは
ウィリアムで、キャサリンは
そう呼んでいたけど
ステイシーは〝アラン〟と
ミドルネームで呼んでいたのも
何か事情があるのかもしれない――
まあ、その頃の僕は、そんなこと
気にも留めなかったけどね。
話を戻すと、
星空を見ていたダッドが
「此処は本当に、静かで良い所だな……」
と呟き、思い付いたように続けた。
「そうだ、此処をスターライト・ルームと呼ぼう。ジェム、これをあげるから、これからも此処でギターを弾くといい」
そう言われて僕の手に
ガーデンの鍵が渡されると
驚きと喜びで、舞い上がったよ!
「さぁ、風邪を引かないうちに帰ろう」
ダッドはフレッドを抱えて立ち上がり
ゆっくりと歩き始めたので、
僕は慌ててギターを背負い
ダッドの背中を追った。
そして、家に入る前に
ダッドが立ち止まって言ったんだ。
「ジェム、強い男になるんだ。誰も傷つけないくらい強く……」
この時のダッドの背中を
僕は永遠に、忘れない――
他にいるのか調べたところ『赤毛のアン』のアンの長男がジェムでした。小学生の頃シリーズを読んでいたので、頭の片隅に残っていたのかも⁉︎〝My Gem〟は、そこから拝借してみました(´∀`)