1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

No.1-006 Mollycoddle

「なあ、ジェム?」

ダッドは僕のことを、ジムやジミー
ではなく〝ジェム〟と呼んでいた。

「見てごらん、星が出てきたね? 僕の故郷では、この何倍もたくさんの星が輝いているんだよ。まるで宝石のようにね」

空を見上げるダッド。

「ジェム、僕の宝石Gem――いつか君に、あの星空を見せてあげたい……

ダッドの故郷は
ロンドンから離れていたので
まだ一度も、行ったことは無かった。

「グランマ[祖母]は、優しくて好きだよ。グランダディ[祖父]には、会ったことないから分からないけど」

この頃は
ダッドの母親だと思っていた
祖母のキャサリン
実はダッドの義母だとは
知らなかったんだ。

僕等が住んでいるロンドンの家は
キャサリンから与えられたものらしく
その経緯には、ダッドの複雑な
家庭環境が影響しているみたいだ。

そう言えば、ダッドのファーストネーム
ウィリアムで、キャサリン
そう呼んでいたけど
ステイシーは〝アラン〟と
ミドルネームで呼んでいたのも
何か事情があるのかもしれない――

まあ、その頃の僕は、そんなこと
気にも留めなかったけどね。

 

話を戻すと、
星空を見ていたダッドが

「此処は本当に、静かで良い所だな……」

と呟き、思い付いたように続けた。

「そうだ、此処をスターライト・ルームと呼ぼう。ジェム、これをあげるから、これからも此処でギターを弾くといい」

そう言われて僕の手に
ガーデンの鍵が渡されると
驚きと喜びで、舞い上がったよ!

「さぁ、風邪を引かないうちに帰ろう」

ダッドはフレッドを抱えて立ち上がり
ゆっくりと歩き始めたので、
僕は慌ててギターを背負い
ダッドの背中を追った。

そして、家に入る前に
ダッドが立ち止まって言ったんだ。

「ジェム、強い男になるんだ。誰も傷つけないくらい強く……

 

この時のダッドの背中を
僕は永遠に、忘れない――

始めから読む(No.1-001)

 

 日本語の感覚だとジェームズを略してジェムって感じがするのに、ジェムって呼び方そうそう聞かない……昔TVで観た、映画『アラバマ物語』の主人公の息子がジェムだったので「ジェムっているじゃん」って喜んだのは覚えてるけど。
 他にいるのか調べたところ『赤毛のアン』のアンの長男がジェムでした。小学生の頃シリーズを読んでいたので、頭の片隅に残っていたのかも⁉︎〝My Gem〟は、そこから拝借してみました(´∀`)