1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスを含むバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場!

No.1-004 Mollycoddle

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僕が6歳を過ぎた辺りから
ダッドは、ほとんど家に
居るようになった。

ダッドが子供用のギターを
買ってくれたので
「大きくなったら、ダディと一緒のステージに立つんだ!」と意気込んでいたよ。

ギターが上手で、優しいダッドが
大好きだったから
家には帰らず、ダッドと喧嘩ばかりする
ステイシーの言うことなんか
当然、聞くわけない。

「ねえダディ⁉︎ マムったら酷いんだよ、文句ばっか言うんだ。マムなんか大っ嫌いだっ!」

僕が興奮する度
ダッドは膝に乗せて
なだめてくれた。

「そんなこと言うもんじゃないよ。マムのお陰で、皆んなで暮らしていけるんだからね」

そう言って大きな手で、彼と同じ
ブロンドで癖っ毛な僕の頭を
撫でてくれるのが嬉しかった。

 

新緑が眩しい季節になると、ダッドはよく
近所のプライベート[会員制]ガーデンに
連れ出してくれた。

柵に囲まれた、ガーデンの裏口にある
簡素な鍵を開けると
そこには豊かな緑が生い茂り
僕とフレッドは、喜んで走り回った。

ガーデンの外れにある、この一画は
たまに、のんびり散歩する老夫婦を
見かけるくらいで
まるで隠れ家みたいに静かだった。

ガーデンに着くと
ダッドはギターを取り出し
先ず最初に弾くのは、彼が唯一作曲した
〝スターライト〟だ。

クラシックギター
搔き鳴らされる、この曲は
サビになると指の動きが
まるで、星屑が散りばめられたような
速さになる。

僕も早く、この曲を弾けるようになりたいと
ギターの練習は欠かさなかった。

 

そして年が明け、春の日差しが伸び始めた
忘れもしないあの日――

始めから読む(No.1-001)

 

 プライベート・ガーデンと言えば、映画『ノッティングヒルの恋人』。ヒュー・グラント演じるウィリアムとジュリア・ロバーツ演じるアナが柵を越えて侵入したのが、住民などの関係者以外は立ち入り禁止のプライベート・ガーデンでした。
 イギリスでは特別なものでなく、あちこちに有るみたいです(金持ちエリアにはw)