1980s 洋楽★創作物語

1980年代ロンドンが舞台のバンドデビュー物語。UK中心の80s 楽曲 (YouTubeリスト参照) が登場! 20年振りに描くイラストも80年代風・・・( ˘ω˘ )

EVERYTHING FOR YOU

No.4-013 Lost The Way

feat. Bananarama 「私が悪いって言うの?」 ルイスのひと睨みで大きく首を横に振るトニィ。 「いや……何でわざわざ……急にこっちに来てくれたのかと……も、もしかして――」 しどろもどろな様子にルイスはイラつき遮った。 「もしかして『もうオレのこと好きじゃ…

No.4-012 Lost The Way

「――感謝祭」 僕等はハッとなった。そうだった、アメリカではサンクスギビング・デーの連休になるんだっけ。 「感謝祭に帰ってこないなんて……おば様も、がっかりしてたわよ?」 鋭い視線を向けるルイスにビクつくトニィ。なんだか、この2人からは甘い雰囲気…

No.4-011 Lost The Way

僕はルイスをなだめなきゃと変に焦ってしまった。 「大丈夫! トニィとあの人は何でもないよ、害はないよ?」 「あったり前でしょ⁉︎」彼女は一睨みして話を続けた。 「それでトニィからの手紙を頼りに、ここに来てみたの。詳しい住所は知らなかったけど、写…

No.4-010 Lost The Way

「どうしたの⁉︎」 慌てたフレッドがバスルームに顔を出した途端、彼は顔面にシャワーのミサイル攻撃を受け、カーテンの影から見知らぬ若い女性が甲高い声で怒鳴ってきたんだ。 「何よあんた達⁉︎ レディが入浴中にスケベ! チカン! エッチ!」 僕は一瞬(本…

No.4-009 Lost The Way

スティーブンを連れてきてくれたヤスには感謝するよ。 もし、あの音を聴いた時スティーブンがいなかったら僕等だけでは、対処できなかったに違いない。フレッドも吠えるどころか固まってしまっていたし…… 僕は心底、フレッドに悪いことをしたという気持ちで…

No.4-008 Lost The Way

「オレが思うに、一度ロバートの言う通り演ってみたらどうだろう? 1曲だけでいいから。そうすれば彼のやりたがっていることが分かるし、それが本当にオレ達に合ってるかも、解るんじゃないか⁉︎」 このトニィの意見を聞いて僕とフレッドは顔を見合わせると…

No.4-007 Lost The Way

「こんなの落ち着いてられないよ! ジェムがそんな奴だったなんて、がっかりだよ」 そう言われて僕も黙ってるはずがない。 「お前こそガキなんだよ。自分の理想ばかりで、周りの状況が見えてない。ロバートの、第三者の意見だって、ちゃんと聞くべきだ」 「…

No.4-006 Lost The Way

feat. Culture Club フレッドの方もかなり気が立っていた。 「ロバートのやることに、疑問を感じないの!? 彼の作る音を気に入ってるの?」 「別に、そういうわけじゃないけど……良い時も悪い時もある、そういうもんだろう」 そう、あっさり答えると彼は怒鳴っ…

No.4-005 Lost The Way

feat. XTC 「だからロバート! この詩の持つ意味を分かってるって言うなら、どうしてここに、そんな音を入れるの⁉︎」 「分かってないのは、君の方だよフレッド。ここは、もっと早いテンポで左右に振り分けないと、新鮮さが失われるだろう⁉︎ 君の音に対する考…

No.4-004 Lost The Way

「ジョージが言ってたんだ。セント・ブライアンズは、たくさんのミュージシャンをバックアップしていて、金銭的に厳しい状態が続いてる。このままだと経営が危ないって。オーナーとウォルターの間も危ういらしい」 皆んな一瞬、言葉を失いフレッドが戸惑うよ…

No.4-003 Lost The Way

feat. Eurythmics それにスティーブンが 「私が米国本社に行っている間に、ファーストアルバムの準備をしておいてくれ」 なんて言うもんだから遊んでいる暇なんて無かった。ファーストアルバムだものやっぱり最高のモノを作りたいんだ! 「おーい、開けてく…

No.4-002 Lost The Way

「電話も早かったし、さては振られたな?」 「何とでも言えよマーク。彼女は長電話するタイプじゃないんだ。なのに『全英No.1おめでとう』って、わざわざ電話をくれたんだよ。優しいだろ?」 今頃〜⁉︎ なんて突っ込みは聞いちゃいない、デレるトニィ。その…

No.4-001 Lost The Way

朝食を食べにレストランに向かう途中フロントのお姉さんがトニィを呼び止めた。 「先程ルイス・ミッチェル様から、お電話がございまして――」 「えっ、ルイスから⁉︎ ジェム、キー貸して!」トニィは慌てて、部屋へ戻って行った。 The Starlight Night の中で…

No.3-032 Believe In (章末)

「あー撮影だけは、どうも苦手だ」 ぐったりしているマークを見て、タナベさんがクスッと笑う。 「紙面でしか君達に会われへん、たくさんのファンのために頑張らな!」 「でもインタビューって、どこも同じ様なこと聞かれるし……」 そう溜め息を漏らすヤスの…

No.3-031 Believe In

feat. Howard Jones 「ジェム、有難いけどそれは――」 マークの言葉を遮り話を続けた。 「君の言いたいことは分かる。僕等だって、この先どうなるかなんて分からない。このバンドが成功する保証なんて無いんだ。でも約束する、僕等は The Starlight Night を …

No.3-030 Believe In

「ポールに相談した結果、この中でオレ達に相応しいと思うのはノーマンレーベルだ。なんたって母体のノーマン・ミュージック・レコードは、アメリカが本社の巨大なレコード会社だしな。ただ、契約金が他所に比べるとイマイチで――」 「君達が私をマネージャー…

No.3-029 Believe In

pick out: Yes 「取り敢えず、シーケンサーという手はあるけど……」と僕。 「でも機械の音なんてな……」とトニィ。 「変わりの奴を探さ――」とヤスが言い終わらないうちにフレッドがテーブルを揺らした。 「そんなこと、できないよ! 僕は絶対認めない。マーク…

No.3-028 Believe In

するとウォルターが気付いたように、まくし立てた。 「そういえばジェム、君も彼女はいないのかい? ちょっと小耳に挟んだけど、界隈で有名なグルーピーの娘としけこんだらしいって、ここの常連のリズ達が憤慨してたぞ⁉︎ 遊びが過ぎると誠実なファンを逃すか…

No.3-027 Believe In

そしてマークはいつものように戯けて見せた。 「ふだん口煩い姉貴がさ、だまーってんのがスゲェ怖かったけど、でもライキーに出るのはOKもらったから。オレのラストステージ、成功させてくれるよな⁉︎」 「もちろんだよ!」皆んな口々に声を上げた。 バンド…

No.3-026 Believe In

「オレの親父、小型船を扱う小さい会社の社長なんだ。社長ったって、ただの飲んだくれジジイだけどな。 オレも海は嫌いじゃないけど優秀でしっかり者の姉貴や病弱で年の離れた弟に比べるとオレは出来損ないでさ、親父の後を継ぐなんて微塵も思わず遊んでばか…

No.3-025 Believe In

「うわっ、何だよ⁉︎」驚き慌てるマーク。 トニィがマークの背中から両腕を押さえると僕は彼のTシャツの左側の袖を勢いよく肩まで捲った。 「タトゥーあった!」歓声を上げるメンバー。 マークの左腕には、彼の大好きなダークヒーローのシンボル、コウモリが…

No.3-024 Believe In

feat. Def Leppard 「マークだ!」叫ぶフレッド。 そこには、金髪ロングヘアでトレードマークのサングラスをしている今の姿からは想像も付かない派手な恰好をした16歳のマークがいた。 しかも袖を引き裂いたTシャツから覗く左腕に見えるのはタトゥー?そん…

No.3-023 Believe In

すかさずマークは、ポケットからデモテープを取り出した。スティーブンも驚いたようだ。 「これは用意がいいな。早速、聴かせてもらうよ」 そして遠くから彼等に声が掛かると 「じゃあライキーでのライブ、頼んだよ。詳しい話はマネージャーにさせるから」 …

No.3-022 Believe In

レジュームとは、最近ロンドンで話題になり始めたロックバンドだ。 「ゴシップ誌で読んだことある。今でこそ人気のレジュームだけど、以前サイドトークと契約して酷い目にあったって」 ヤス、ゴシップ誌なんて読むの⁉︎(ユミコの資料らしい) ポールが、真剣…

No.3-021 Believe In

そういうのに疎い僕は「ポール・エドソンのライブは最高!」なんてことを口にしながらポールが来てくれるのを待ち侘びるばかりだった。 やっと姿を現したポールだけどあちこちの関係者に挨拶して回っている。 ポールはマネージャーから何やら耳打ちされると不…

No.3-020 Believe In

pick out: Sting マークの合図でステージに立つと皆んな無我夢中で演奏した。まばらだった歓声がだんだん津波のように押し寄せてきてあっと言う間の15分だった―― 「終わったー!」 ステージを降りて興奮冷めやらぬまま楽屋に向かって歩き出した。すると 「君…

No.3-019 Believe In

ユミコは軽く頷き 「やっぱり、イギリスに戻ってきて正解ね。日本だと足並み揃えないと厳しいけど……」 とテーブルに置かれた書類の山を揃えながら話を続けた。 「今、日本は経済的に過度期にあるみたい。仕事も原稿料も、どんどん増えてるの。お父さんが遺し…

No.3-018 Believe In

帰り道、ずっと黙り込んでいたヤスが意を決したように口を開いた。 「ジェム、頼みがあるんだけど」 僕とフレッドはその足で岡部家に向かった。 「あら、2人とも久し振りね?」 笑顔のユミコが、出迎えてくれた。 ユミコの淹れてくれたお茶で喉を潤すと、Cl…

No.3-017 Believe In

feat. Pet Shop Boys 「よーし、気合い入れてこうぜ! Club1000 で成功すれば、レコード会社の目に止まる、千載一遇のチャンスだ!」 マークの掛け声で皆んな張り切って準備を進めた。 そして熟考を重ねたセットリストに合わせ一通り演奏し終わると 「そろそ…

No.3-016 Believe In

するとライリーから「空いている時間なら構わねーぞ」とスタジオ使用の了承を得たんだ。 マークの社交性の高さには、脱帽だよ! さっそく、僕とマークとトニィでデモテープ作りに取りかかり休日にはフレッドとヤスを呼んで完成を目指した。 デモテープが完成…