1980s 洋楽★創作物語

舞台は1980年代。ロンドンから来日した、新人バンドのVo. ジェムの目線で描く、日本人少年ヤスを含むバンド仲間や家族との成長物語。UKバンドを中心とした、あの頃のあの曲が登場!

−−No.1 Mollycoddle

No.1-026 Mollycoddle(章末)

「まあ直ぐには無理だけど、ステイシーのことは、受け入れるよう努力するよ」そう言うと、フレッドは嬉しそうに頷いた。 ――強い男になるんだ。 誰も傷つけないくらい強く―― ダッドの残した言葉が、強く心に響いていた。 ★ ★ ★ 「ほら、寝ぼけてないでジェム⁉…

No.1-025 Mollycoddle

フレッドの話をさえぎり家より少し手前のバス停で降りた。 僕等は黙って歩き、着いた所は懐かしいスターライト・ルームだ。 「鍵、持ってないよ?」困惑するフレッド。 僕は入り口から少し外れた先の茂みに手を掛け、木の枝を伝い柵を越えてガーデンの中に入…

No.1-024 Mollycoddle

「……悪かったよフレッド。ちゃんと家に帰る」と両手を挙げてみせた。 そうなんだ、フレッドのお陰で僕はこの泥沼から抜け出せたんだ! するとフレッドは、少し照れながら握手を求めてきた。 「改めてよろしく。ええっとジェームス・サミュエル・スミス?」 …

No.1-023 Mollycoddle

「あの坊や、すっ飛んで行っちまったけど大丈夫かね?」エースがボソッと呟いた。 「あっ!」 僕は慌てて、走り出した。 彼はロンドンの町に、まだ慣れてないはず。道に迷っていたら…… いや、それより心配なのはブランドマークが付いたポロシャツを着た彼が…

No.1-022 Mollycoddle

「マム、式の時は気丈にしてたけど、部屋に戻った途端に泣き崩れたの、僕見ちゃったんだ。なんとなくその時、マムはダッドのこと、まだ愛してたんじゃないかって思っちゃった……」 フレッドは顔を上げると真っ直ぐ僕を見据えた。 「ジェムがこんな所に居たか…

No.1-021 Mollycoddle

どうしようもない感情だけが一気に込み上げてきた。 フレッドはピックを弦に挟むともの凄く悲しそうに、僕を見つめた。 「うるせーゾお前ら、出てけ!」 エースに怒鳴られ、僕等は外に出るとフレッドが泣き出しそうな声で話し出した。 「ダッドはギターを弾…

No.1-020 Mollycoddle

「どうした少年、そのエプロン坊やは何者だ?」エースはチラッと僕等を見てそのままスティックと、話を続けた。 「たまには女でも連れて来いよ」ファズは、せせら笑った。 フレッドはビクつき、声を細めた。 「ジェム、帰ろうよ……今までこんな所にいたの? …

No.1-019 Mollycoddle

feat. Adam Ant - Goody Two Shoes 「その分じゃ、何も聞かされてないみたいだね⁉︎ ダッドはね、病気で天国へ逝っちゃったよ。だから僕はマムに引き取られた」 あまりの事に、言葉を失う僕。そこへステイシーが、昼だというのに寝起きの姿で現れた。 「あら…

No.1-018 Mollycoddle

リンダが行ってしまうと僕はまた、荒んだ生活に戻ってしまった。 本当は、あの連中と付き合うことに何の価値も無いと、分かってはいたんだ。 リンダの言葉を思い出しては「ここから抜け出さなきゃ」と思うのに 「ここに居れば、もう独りになることはない」 …

No.1-017 Mollycoddle

「あんなクソみたいな奴ら、付き合ってらんないよ」 その日以来、リンダとは急速に親しくなっていった。 彼女は父親が合唱団員で小さい頃から歌っていたから発声方法には詳しいとヴォイストレーニングをしてくれたんだ。 但し条件として 「ちゃんと家に帰っ…

No.1-016 Mollycoddle

別に彼等を、好きなわけじゃなかったよ。 彼等はいつも、女の子を連れ歩き昼間っから酒やドラッグを浴びては他のグループと賭け事に、明け暮れていた。 夜は変な連中しか来ないライブハウスに出ちゃ騒音をかき鳴らし唾をかけられたりして、しょっちゅうトラ…

No.1-015 Mollycoddle

ある日、繁華街の裏手で声を掛けられた。 「良いとこのお嬢ちゃんが、こんな場所にいちゃいけないな~」 振り返ると僕とそう年が変わらない少年がニヤニヤしながら立っていた。 典型的な、ワーキング・クラスの彼ファズに連れられて、繁華街の中でも物騒なエ…

No.1-014 Mollycoddle

それでも、メアリーが無事に女の子を産んで会わせてくれた時は嬉しかったな。 この小さな命が笑いかけてくれるのを見ていたらメアリーが一大決心してローランドに付いて行ったのは正しかったと思えたんだ。 ◇ ◇ ◇ メアリーという、心の支えを失った僕を見兼…

No.1-013 Mollycoddle

「ジェム! 今のは英国紳士ジェントルマンの口の訊き方じゃないわ。謝りなさい」 こんな風に怒ったメアリーは初めてだった。 僕はショックで 「メアリーなんか大っ嫌いだ! フランスでも何処でも行っちまえ!」と吐き捨て、リビングを飛び出した。 程なくし…

No.1-012 Mollycoddle

そして、メアリーの婚約者ローランド・ユスティーヌ・モローが挨拶にやって来た。 ステイシーとミスターはまだ、出先から戻ってなかったので僕が一家の主人あるじとして(!)憮然とローランドを出迎えた。 彼も大きな体で、見下すように手を差し伸べてきた…

No.1-011 Mollycoddle

僕が10歳の頃、メアリーは何だか思い詰めている様子が続いた。 「どうしたのメアリー? 何かあった?」 彼女は理由を、言ってはくれなかったけど強く抱き締めてくれたよ。 「ありがとうジェム。優しい子ね、大好きよ」 彼女の腕の中で僕はとても幸せな気分に…

No.1-010 Mollycoddle

彼女は一人っ子だったせいか僕を弟のように、可愛がってくれたよ。 それに、ダッドとフレッドと離ればなれになってしまった僕にとても同情的だった。 僕は本気で、思ってたんだ。「大きくなったら、メアリーと結婚するんだ。ダディとマムのように、別れたり…

No.1-009 Mollycoddle

メアリーは、僕の演奏をたくさん褒めてくれたよ。僕は嬉しくてたちまち彼女に夢中になった。 彼女とヤスのお陰でダッドとフレッドがいない寂しさを忘れることが、できたんだ。 とはいえ、僕は両親の離婚で深く傷ついていたと思う。 愛する人が離れていってし…

No.1-008 Mollycoddle

僕は小さい頃から母親を好きではなかった。例え母親と離れることになっても父親と一緒にいたかった。 なのに 「ダディは僕を置いていった。ダディは僕ではなく、フレッドを選んだ」 そう思ってしまい、フレッドのことも憎らしくなってしまった。 だから、2…

No.1-007 Mollycoddle

事件は、次の日に起こった。 昼食の後、ダッドとステイシーが車に荷物を積み出した。 「ねえジェム、旅行でもするの?」フレッドがキョトンとしている。 「知らないよ、そんなこと聞いてない……」 支度が終わるとダッドはフレッドを車に乗せた。遠くで様子を…

No.1-006 Mollycoddle

「なあ、ジェム?」 ダッドは僕のことを、ジムやジミーではなく〝ジェム〟と呼んでいた。 「見てごらん、星が出てきたね? 僕の故郷では、この何倍もたくさんの星が輝いているんだよ。まるで宝石のようにね」 空を見上げるダッド。 「ジェム、僕の宝石Gem――…

No.1-005 Mollycoddle

夕飯を終えた、僕とフレッドを連れてダッドはガーデンに向かった。 まだ、寒さの残る外気の中スターライトを弾くダッドに見惚れ思うように弾けない自分にむくれて見せた。 「何でそんなに、指を動かせるの⁉︎ 僕も本当に、スターライトを弾けるようになる?」…

No.1-004 Mollycoddle

僕が6歳を過ぎた辺りからダッドは、ほとんど家に居るようになった。 ダッドが子供用のギターを買ってくれたので「大きくなったら、ダディと一緒のステージに立つんだ!」と意気込んでいたよ。 ギターが上手で、優しいダッドが大好きだったから家には帰らず…

No.1-003 Mollycoddle

僕はロンドンの高級住宅街と呼ばれるエリアに ダッド[父]のウィリアム・アラン・スチュアートマム[母]のステイシー・アン・スチュアート未亡人のナニー[乳母]Mrs.ジョーンズ弟のフレッド、そしてブリティッシュ・ショートヘア[猫]ベルの5人と一匹で…

No.1-002 Mollycoddle

「「全英No.1、おめでとう!」」 この台詞を浴びてから1時間ちかく経ちアルコールに弱い僕はそっとパーティーを抜け出した。 ホント、お祭り好きな奴ばっかなんだ。全英No.1で、あんなにはしゃいじゃってさ。 確かに、奇跡としか思えなくて僕だって心…

No.1-001 Mollycoddle

「お疲れ様!」「最高だったよ!」 関係者やスタッフ、マネージャーが僕等を笑顔で迎えてくれた。 今日は僕等のバンドThe Starlight Night の日本公演の初日で、ちょうど今渋谷公会堂でのライブが終わったところ。 僕等はプロモーション・ツアーの真っ最中で…